AbstractSymbolism-抽象的象徴
金沢アートスペースリンク 2016
Abstract Symbolism-抽象的象徴
12.3/土-1.15/日 11:00 ‐20:00 水曜定休
ギャラリールンパルンパ 石川県野々市市本町1-29-1スマイリー1F
電話 076-287-5668
Abstract Symbolism-抽象的象徴
創成期の抽象表現主義の核に信仰的美を見出す作家の、数と文明、信仰と象徴の変奏が織りなす新たな美の概念
「AbstractSymbolism-抽象的象徴 」 についての考察
TARTAROS JAPAN
◆はじめに
シンボリズム四部作CrossSymbolism- 世界は象徴で読み直せるか? 連続展示の第三部"AbstractSymbolism-抽象的象徴 "は、抽象彫刻、抽象絵画で構成されたシンボリズム四部作の核となる展示です。各作品の個別解説は別紙の作品解説を見て頂くとして、本考察では展示の背景についてご説明したいと思います。
◆抽象絵画の起源としてのスピリチュアリズム
まずはじめに、抽象絵画の起源について私の視点から簡単に触れてみたいと思います。
1912年に青騎士というドイツで起こった企画展示と綜合的な芸術年刊誌の発行を行っていた芸術家達がいました。カンディンスキーが中心でクレーなども参加し、表現主義から抽象絵画に向かう起点となったムーブメントです。彼らはプリミティブな芸術や民芸などを見直し、キュビズム等の影響も受けながら物質文明に抗う精神の芸術として抽象絵画を始めたのです。ここで明確に抽象画に移行したのがカンディンスキーですが、同時に並行して抽象画に取り組んでいたヒルマ・アフ・クリントというスウェーデンの女性がいました。二人は同様にヘレナPブラヴァツキ―が創設した神智学協会の神秘主義思想に強い影響を受けていました。抽象絵画の誕生の裏側には、スピリチュアルな思想、瞑想による視覚体験の影響が強くあると私は観ています。特にプリミティブな工芸品、民芸品の装飾には変性意識状態の視覚パターンが用いられる事なども潜在的にこの現象とリンクします。物質主義的な社会の反動として黎明期の抽象絵画の誕生があったのではないでしょうか。
◆AbstractSymbolism 抽象表現主義、瞑想体験、文明シンボルの融合
私は瞑想を普段から行い、特殊な視覚体験をドローイングで記録する作業を日常的に行っています。
瞑想の視覚体験と黎明期の抽象表現主義の作品に共通項を発見した経緯から、抽象絵画とスピリチュアル性との関係性に注目するようになりました。
抽象表現主義のカラーフィールド(色彩が身体を包み込む大画面の様式)が持つ体感感覚には様々な宗教観を超越した信仰心の高揚感とでもいう感覚が、マークロスコやバーネットニューマンの作品に漲っています。マークロスコは自分の絵画が神殿の柱を現している事に後で気付いたと言っています。ロスコが宗派を超えた人間の信仰心の表現に向ったのは、ロスコチャペルに至る彼の制作態度に明確に現れています。バーネットニューマンもピラミッドやオベリスクをモチーフとした文明信仰の再定義とも言えるモニュメンタル性を追求し、聖書を題材とした遺作シリーズに至る流れで超越した信仰の表現に向いました。彼等の共通点はこの様式に至る手前の段階で神話をテーマにしたシュールレアルな様式を追及していた事にも伺えます。しかしその後の抽象美術の流れは、その様な視点は削除されミニマリズム、ネオダダ、ポップアート等が主流です。そこに信仰やスピリチュアルな要素はあまり見受けられません。私は瞑想の中で常にスピリチュアルな感覚に触れる機会が多く、それが何を意味するのか?という疑問を自分で咀嚼する行為として絵画に取り組んで来ました。それが私の表現の根幹にあり、作品に必要なエネルギーの核にあるという確信が彼等の作品と共振したのかもしれません。
展示空間解説と中心概念 ※本展示は3つの空間で構成されます。
「文明の始まりと終わり」※入口左 抽象表現主義、瞑想体験、文明シンボルと数の融合
「 Count up No9 Black Entasis ナンバーペインティング ONE 」
興味深いのは、抽象表現主義は国家の庇護の元、拡大し作品も巨大化していった経緯です。アメリカの国家戦略として現代美術の基盤を担いました。ここに文明や国家と美術の密接な関係性を感じます。
私がモニュメンタルなモチーフに惹かれる心の深層にはかっての偉大な文明や信仰心への興味がありますが、古代文明を出発点とした現在の文明のあり方に大きな疑問があるのです。科学がもたらしたこの世界の成り立ち、数学を用いた通貨交換制度を基盤とした文明の在り方に根本的な欠陥があるのでは?文明の始まりと終焉のシンボルとしての神殿の柱、エンタシス、オベリスクを用いるのはそういった感覚への接近から来ています。数が発生する以前の心の在り方への回帰というインスピレーションを、9という無限循環する数に託しています。文明の次のフェーズを予感させる空間として構成しました。
「人間の地球意識への変容」※入口右 交差する聖性の多様性シンボル 「 ネオクロス 」
ネオクロスという十字架をモチーフにした彫刻は現代における聖性の変容を象徴しています。
曲線は地球の海の波、風、流動するエネルギーの象徴です。また人の思考や思想、信仰や文明の有り方も変容していく事を表現しています。特に現文明の宗教で抑圧されてきた女性聖や自然信仰に再び戻るイメージを託しています。
「魂の宇宙的循環」※奥窓側 メディテーションフィールド 「 惑星 」
カラーフィールドと呼ばれる抽象表現主義の大きな画面に包まれる感覚に連なる実験として、太陽系の惑星をモチーフにした連作を試みました。私は瞑想に入る時、黒い空間から光る楕円の窓や扉のようなものを通過し、星に接近する事があります。その印象を我々の住む太陽系の惑星の印象と繋げ、その惑星の魂とコミニケーションするイメージで描いたシリーズです。仏陀が見た宇宙の姿は、チベットのポン教の教えで宇宙規模の魂の輪廻の読み直しだと思想家中沢新一はチベット死者の書の解説で語っています。ポン教の教えでは魂は宇宙規模の惑星の中で輪廻していると伝えています。
「タイムレススピリチュアリズム」 ※全体を構成する概念 時空を超える芸術の力
ある意味美術史的文脈というものは、社会風土に左右され誕生します。そこで支配力を発揮できるものが文脈とされる。しかし現在は歴史そのものが直線的に語られる時代は終わった様に感じます。過去の美術史的文脈は一つの点に内包されその空間に中に私達は漂っている様に感じます。タイムレスな視点で美術を見れば核となる様々な作品に出会えます。シンボリズム連続展示の偶像、瞑想、抽象、第四部の通貨と社会シンボルを素材にしたコンセプチャルアートに至るパラレルな展開背景にはその様な意識の流れ、タイムレススピリチュアリズムという概念に今向かい出していると感じています。
この概念の制作実践は例えればARTのトライアスロン。心身知魂が混濁する中で新たな領域に入る予感があります。作品の潜在的な意図は常に後で解ってくる、そのような行程に私の芸術的挑戦があると思います。
Abstract Symbolism-抽象的象徴
12.3/土-1.15/日 11:00 ‐20:00 水曜定休
ギャラリールンパルンパ 石川県野々市市本町1-29-1スマイリー1F
電話 076-287-5668
Abstract Symbolism-抽象的象徴
創成期の抽象表現主義の核に信仰的美を見出す作家の、数と文明、信仰と象徴の変奏が織りなす新たな美の概念
「AbstractSymbolism-抽象的象徴 」 についての考察
TARTAROS JAPAN
◆はじめに
シンボリズム四部作CrossSymbolism- 世界は象徴で読み直せるか? 連続展示の第三部"AbstractSymbolism-抽象的象徴 "は、抽象彫刻、抽象絵画で構成されたシンボリズム四部作の核となる展示です。各作品の個別解説は別紙の作品解説を見て頂くとして、本考察では展示の背景についてご説明したいと思います。
◆抽象絵画の起源としてのスピリチュアリズム
まずはじめに、抽象絵画の起源について私の視点から簡単に触れてみたいと思います。
1912年に青騎士というドイツで起こった企画展示と綜合的な芸術年刊誌の発行を行っていた芸術家達がいました。カンディンスキーが中心でクレーなども参加し、表現主義から抽象絵画に向かう起点となったムーブメントです。彼らはプリミティブな芸術や民芸などを見直し、キュビズム等の影響も受けながら物質文明に抗う精神の芸術として抽象絵画を始めたのです。ここで明確に抽象画に移行したのがカンディンスキーですが、同時に並行して抽象画に取り組んでいたヒルマ・アフ・クリントというスウェーデンの女性がいました。二人は同様にヘレナPブラヴァツキ―が創設した神智学協会の神秘主義思想に強い影響を受けていました。抽象絵画の誕生の裏側には、スピリチュアルな思想、瞑想による視覚体験の影響が強くあると私は観ています。特にプリミティブな工芸品、民芸品の装飾には変性意識状態の視覚パターンが用いられる事なども潜在的にこの現象とリンクします。物質主義的な社会の反動として黎明期の抽象絵画の誕生があったのではないでしょうか。
◆AbstractSymbolism 抽象表現主義、瞑想体験、文明シンボルの融合
私は瞑想を普段から行い、特殊な視覚体験をドローイングで記録する作業を日常的に行っています。
瞑想の視覚体験と黎明期の抽象表現主義の作品に共通項を発見した経緯から、抽象絵画とスピリチュアル性との関係性に注目するようになりました。
抽象表現主義のカラーフィールド(色彩が身体を包み込む大画面の様式)が持つ体感感覚には様々な宗教観を超越した信仰心の高揚感とでもいう感覚が、マークロスコやバーネットニューマンの作品に漲っています。マークロスコは自分の絵画が神殿の柱を現している事に後で気付いたと言っています。ロスコが宗派を超えた人間の信仰心の表現に向ったのは、ロスコチャペルに至る彼の制作態度に明確に現れています。バーネットニューマンもピラミッドやオベリスクをモチーフとした文明信仰の再定義とも言えるモニュメンタル性を追求し、聖書を題材とした遺作シリーズに至る流れで超越した信仰の表現に向いました。彼等の共通点はこの様式に至る手前の段階で神話をテーマにしたシュールレアルな様式を追及していた事にも伺えます。しかしその後の抽象美術の流れは、その様な視点は削除されミニマリズム、ネオダダ、ポップアート等が主流です。そこに信仰やスピリチュアルな要素はあまり見受けられません。私は瞑想の中で常にスピリチュアルな感覚に触れる機会が多く、それが何を意味するのか?という疑問を自分で咀嚼する行為として絵画に取り組んで来ました。それが私の表現の根幹にあり、作品に必要なエネルギーの核にあるという確信が彼等の作品と共振したのかもしれません。
展示空間解説と中心概念 ※本展示は3つの空間で構成されます。
「文明の始まりと終わり」※入口左 抽象表現主義、瞑想体験、文明シンボルと数の融合
「 Count up No9 Black Entasis ナンバーペインティング ONE 」
興味深いのは、抽象表現主義は国家の庇護の元、拡大し作品も巨大化していった経緯です。アメリカの国家戦略として現代美術の基盤を担いました。ここに文明や国家と美術の密接な関係性を感じます。
私がモニュメンタルなモチーフに惹かれる心の深層にはかっての偉大な文明や信仰心への興味がありますが、古代文明を出発点とした現在の文明のあり方に大きな疑問があるのです。科学がもたらしたこの世界の成り立ち、数学を用いた通貨交換制度を基盤とした文明の在り方に根本的な欠陥があるのでは?文明の始まりと終焉のシンボルとしての神殿の柱、エンタシス、オベリスクを用いるのはそういった感覚への接近から来ています。数が発生する以前の心の在り方への回帰というインスピレーションを、9という無限循環する数に託しています。文明の次のフェーズを予感させる空間として構成しました。
「人間の地球意識への変容」※入口右 交差する聖性の多様性シンボル 「 ネオクロス 」
ネオクロスという十字架をモチーフにした彫刻は現代における聖性の変容を象徴しています。
曲線は地球の海の波、風、流動するエネルギーの象徴です。また人の思考や思想、信仰や文明の有り方も変容していく事を表現しています。特に現文明の宗教で抑圧されてきた女性聖や自然信仰に再び戻るイメージを託しています。
「魂の宇宙的循環」※奥窓側 メディテーションフィールド 「 惑星 」
カラーフィールドと呼ばれる抽象表現主義の大きな画面に包まれる感覚に連なる実験として、太陽系の惑星をモチーフにした連作を試みました。私は瞑想に入る時、黒い空間から光る楕円の窓や扉のようなものを通過し、星に接近する事があります。その印象を我々の住む太陽系の惑星の印象と繋げ、その惑星の魂とコミニケーションするイメージで描いたシリーズです。仏陀が見た宇宙の姿は、チベットのポン教の教えで宇宙規模の魂の輪廻の読み直しだと思想家中沢新一はチベット死者の書の解説で語っています。ポン教の教えでは魂は宇宙規模の惑星の中で輪廻していると伝えています。
「タイムレススピリチュアリズム」 ※全体を構成する概念 時空を超える芸術の力
ある意味美術史的文脈というものは、社会風土に左右され誕生します。そこで支配力を発揮できるものが文脈とされる。しかし現在は歴史そのものが直線的に語られる時代は終わった様に感じます。過去の美術史的文脈は一つの点に内包されその空間に中に私達は漂っている様に感じます。タイムレスな視点で美術を見れば核となる様々な作品に出会えます。シンボリズム連続展示の偶像、瞑想、抽象、第四部の通貨と社会シンボルを素材にしたコンセプチャルアートに至るパラレルな展開背景にはその様な意識の流れ、タイムレススピリチュアリズムという概念に今向かい出していると感じています。
この概念の制作実践は例えればARTのトライアスロン。心身知魂が混濁する中で新たな領域に入る予感があります。作品の潜在的な意図は常に後で解ってくる、そのような行程に私の芸術的挑戦があると思います。